05年第3回定例会一般質問(1)介護保険について
※以下の質問と答弁は、質問原稿と答弁資料をもとに作成しました。公式の議事録と異なる場合がありますがご了承ください。
日本共産党杉並区議団を代表して、1、介護保険について 2、子どもの医療費助成について 3、三井グランドの宅地化計画について、一般質問します。
最初に介護保険について質問します。
6月22日、介護保険法等一部改正が自民党、公明党、民主党の賛成によって可決、成立しました。国の財源を削減することを目的としたこの改悪は、「予防重視」の名のもとに軽度者の介護サービスを取り上げ、施設利用者に居住費、食費を全額自己負担させるなど、利用者に大幅な負担増を押し付けるもので、介護にかかわる幅広い団体・個人から批判の声があがりました。老齢で病気や生活障害をかかえる高齢者やその家族にとって、深刻な問題だらけの制度になろうとしています。多くの問題点がある制度改定ですが、10月からの負担増の問題を中心に質問します。
まず、利用者の負担軽減の支援策についてです。特別養護老人ホームなど施設利用者の食費と居住費が、保険からはずされ全額自己負担になります。いわゆるホテルコストの導入です。多床室に入っている保険料第4段階の人の場合、これまでは自己負担5万6千円でしたが、10月からは8万1千円に引きあがります。毎月2万5千円、年額にすると30万円の負担増です。第3段階の人の場合も毎月1万5千円、年額18万円の負担増となります。平均で年間39万円もの大変な負担増になり、お金がない人は施設に入れないという深刻な事態がうまれることが心配されています。国は「低所得者に対する負担軽減措置をとった」といいますが、年金が月7万円で「準個室」に入所する高齢者の場合、利用料は8万5千円で年金額を超えてしまいます。「低所得者に配慮している」とは到底いえません。6月に国会で成立し、10月からこれほど大きな負担増を強いるというやり方も利用者や家族の理解をえられるものではありません。
ショートステイ利用者の場合も深刻です。従来の利用料以外に、居住費と食費あわせて1日2530円の保険外負担が発生します。1週間なら17,710円、保険料第3段階で軽減があっても、1日1470円、1週間で10,290円の負担増となります。新たな負担に耐えられず、ショートステイの利用日数を減らさざるをえないケースがすでにうまれていると、先日あるケアマネージャーさんにお聞きしました。その方は、要介護度3、81才の女性ですが、家で入浴できないため、ショートステイで入浴することを楽しみに毎月7日間程利用していましたが、10月からは4日間に減らさざるをえないと言ってきたそうです。
そこでうかがいますが、居住費、食費の保険外による自己負担増の影響を受ける区民の利用者の総数はどのくらいでしょうか。負担軽減のために、区として独自の支援策を検討すべきですがいかがでしょうか。
答弁:今回の施設給食費の見直しにより自己負担増になる施設入所者は、およそ1400人程度と予測しております。今回の見直しは、介護サービスを在宅で受ける方と施設で受ける方の費用の不均衡を是正するもので、施設利用者に対して食費等応分の負担を求める趣旨でございます。また、低所得者の利用料については、負担限度額の設定や社会福祉法人等による軽減策が講じられております。こうしたことから、区として独自の支援策は考えておりません。
デイサービスやデイケアなど通所介護サービス利用者の場合も食費が保険外負担となります。ある事業所は、これまでは本人自己負担440円と保険給付420円の合計860円で1食分をまかなってきましたが、10月から保険給付分420円がなくなるため、利用者負担を680円に引き上げる予定だということです。それでも、180円は赤字となり、その分は事業所の持ち出しとせざるをえないとおっしゃっていました。区内のデイ事業者は、利用者負担を750円から800円に設定するだろうとのことです。全国で約138万人、区内では、3000人以上が通所介護サービスを利用していますが、保険料段階による食費の軽減措置はまったくありません。千代田区、荒川区ではデイサービス利用者の食費を区が独自に補助することが昨日報道されました。自己負担が増えることによって利用回数が減ることがないように、区としてもデイサービス、デイケアなど通所介護サービス利用者への食費に対する軽減制度を検討すべきと考えますがいかがでしょうか。
答弁:デイサービス、デイケアなどを対象にした食費に関するお尋ねですが、デイサービス等につきましては入所者に比べて利用日数の関係で負担が少ないことから低所得者に対する負担限度額は設けられていませんが、在宅者との不均衡を是正する趣旨でございますので、区としての軽減制度は考えておりません。なお、生計困難者に対しては入所者と同様の社会福祉法人等による減免制度がございます。
次に、サービス提供事業者への支援策についてうかがいます。利用者の負担増とともに、事業者への影響も深刻です。ある特養ホームの施設長さんは、これまでの食材料費、調理人件費1日ひとり2120円の保険給付がなくなるため、入所者から1日1380円の食費を徴収しても、人件費込みでどうやって1日1380円で3食まかなえるのか。食事は入所者の一番の楽しみ、質を低下させるのは忍びない。施設で負担せざるをえないと肩をおとしておられました。また、いままでは特養の赤字分をデイサービスで補填してきたがデイサービスも食事の保険給付がなくなり逆に施設の持ち出しとなるため、それもできなくなる、都の経営支援事業を増額してほしいとの要望がよせられました。介護報酬の削減は、介護労働者の労働環境にも影響し、介護サービスの質の低下にもつながる問題です。
サービスの質を落とさないために、区として支援策を検討すべきですが、いかがでしょうか。東京都が実施している特別養護老人ホームなどへの経営支援事業を拡充するよう要請すべきですがいかがでしょうか。
答弁:施設事業者に対する支援策についてのお尋ねですが、今回の見直しは、食費・居住費にかかる経費を介護保険報酬から除外し利用者の負担としたものでございますが、食費等は事業者が実際にかかる経費を適正に算出した額で利用者と契約できることになっております。したがいまして、区としての支援策は考えておりません。また、東京都が実施している経営支援事業の拡充については、東京都の政策判断によるべきと考えますので区として要請することは考えておりません。
次に、低所得者への利用料軽減策の後退についてお聞きします。国は、社会福祉法人による利用者負担軽減制度について、事業者の負担を軽減し、収入および預貯金などの資産要件を緩和、対象者を拡大する一方で、利用者負担の減額割合をこれまでの5%から7,5%に引き上げようとしています。東京都はこの国の制度をもとに実施主体や対象サービスを独自に拡大した軽減措置をとっていますが、国の動きに連動しようとしています。利用者は、まだ多くはありませんが、対象者にとっては重大な負担増となり、その分利用しているサービスを減らさざるをえない事態もうまれかねません。利用者の要件緩和や事業者の負担軽減は当然ですが、低所得者への軽減策が後退することは見過ごせない問題です。東京都にも働きかけ、5%軽減が継続されるようにすべきですがいかがでしょうか。
答弁:社会福祉法人等が実施する生計困難者に対する利用料の減免についてのお尋ねですが、今回、国において収入要件等を緩和し対象者を広げたこと、老齢福祉年金受給者について5%に据え置いていること、また、東京都においては軽減する事業と対象となる事業者を独自に国より拡大していることなど、一定の配慮がされているものと区として考えておりますので、都に対して5%軽減を継続するよう働きかけることは考えておりません。
最後に、配食サービスについてうかがいます。区は、1食につき600円の委託料と440円の利用者負担で夕食を届ける配食サービスを行なっています。この委託料600円が200円に減額されるのではないか、と事業者のあいだで不安の声が広がっています。減額されれば、利用者にとって大幅な値上げとなるだけでなく、事業者にとっても経営難を引き起こすことは必至です。知り合いの看護師さんにきいたあるひとり暮らし往診患者さんのケースですが、その方をはじめて往診したときは、栄養状態が非常に悪かったのですが、配食サービスを利用し始めて、みるみる状態が改善していったそうです。非常に栄養バランスにすぐれた食事だといえます。配食サービスは食事をつくるのが困難なひとりぐらしや高齢者のみ世帯にとって、安否確認も行なえる重要なサービスです。大幅に値上げとなれば、利用を減らし、コンビニの安いお弁当に流れてしまうのではないか、と危惧されます。介護保険外のサービスであり、介護保険の動きと連動させる必要はありません。配食サービスの委託料は現行制度を維持すべきですが、区の見解はどうかうかがいます。
答弁:配食サービスに関するお尋ねですが、当該事業は今回の制度改正で新たに創設される地域支援事業の中の介護予防事業として介護保険制度に組み込まれることになります。従って、デイサービス等他の介護保険サービスと同様に、食費を自己負担とする考え方で事業の見直しをしていく必要があり、配食サービスの委託料については現行制度のまま継続することはできないものと考えております。