05年第3回定例区議会一般質問(3)三井グランドの宅地化計画について
※以下の質問と答弁は、質問原稿と答弁資料をもとに作成しました。公式の議事録と異なる場合がありますがご了承ください。
最後に、三井グランドの宅地化計画について質問します。
昨年、三井不動産株式会社は、高井戸東1丁目の三井グランドを今年9月に閉鎖
し、6階建ての中層マンションと戸建て住宅で700戸の大規模住宅を建設する計画を発表しました。
計画が出されると同時に、多くの周辺住民から、このグランドは貴重なみどりや動植物の宝庫であること、周辺住民36600人の広域避難場所になっていることなどから、既存のままオープンスペースとして残してほしいと声があがりました。また、人口と車の増加によって周辺の道路や浜田山駅の混雑、小中学校の教室不足などの事態をまねくのではないか、さらには、コンクリート化でヒートアイランド現象がいっそう深刻になるのではないか、雨水が下水と神田川に流出し、都市型水害に輪をかけるのではないかなど環境に与えるさまざまな影響も懸念されています。 わが党は昨年末から今年初めにかけてアンケートを行いました。「古くからの林など大切な環境を守ってほしい。世の中の流れに逆行する大企業のモラルが信じられません。自然は一度こわしたら二度と元には戻りません」「みどりイコール人の命と考えてもよいくらい大切な問題を住民に相談もなしに計画とは許されません」など、寄せられた声の9割はグランド存続を求めるものでした。三井主催の説明会でも区主催の説明会でも、三井の宅地化計画に反対する声が圧倒的多数でした。それだけ、住民の意向に沿わない計画であることは明確です。
そして、三井不動産の計画そのものとともに、問題なのが杉並区の姿勢です。
この地域は、第一種低層住居専用地域として10メートル以上の建物が建てられないなど高さ制限があり、床面積も低く抑えらています。三井が6階だてのマンションを建設するためには、用途地域、容積・建ぺい率を緩和しなければなりません。そのために 区は、容積率を1,5倍に引き上げ、用途地域も「第一種低層住居専用」から「第一種中高層住居専用」に変更する地区計画案を作成し提案しました。まさに、三井の意向にそったもので、事業者のいいなりではないか、との批判が噴出するのは当然です。そもそも、進め方が問題です。区は、まちづくり基本方針のなかで区民の計画段階からの参画といっていますが、それがまったく抜け落ちています。これまで多くの住民からもっと住民の意見をきくべきだという声があがっているにもかかわらず、区は「民間の土地であり、区が口をはさむのには限界がある」などといって住民の声を無視してきました。けれども、この区の言い分はおかしなことです。たしかに、現行の用途地域で事業者が建てるなら口をはさむ余地は限界があるかもしれません。しかし、この地区計画はあくまで区独自の計画であり、区が提案するものです。ですから、都市計画審議会でも少なくない委員から「住民の意見をききながら慎重にやるべきだ」と意見が出されてきたのです。地区計画をつくるうえで、計画段階からの区民参画を保障しない区の進め方はおかしいのではないでしょうか、見解を求めます。
答弁:三井グランドに係る地区計画を定める際の区民の参画についてのお尋ねにお答えします。
この地区計画は、三井グランドの土地利用を転換するにあたり定めるものであり、区は、杉並区まちづくり基本計画に基づき、事業者を指導する一方、構想の段階から説明会を開催し、区の基本的な考え方を説明するとともに、地区計画等の策定に向けた作業を進めてきております。
当該グランドの土地所有者は一企業であること、また、そもそも開発自体を認めないとする区民の方々もおいでであることから、まちづくり協議会方式はなじまないと考え、説明会方式を中心に区民の参画を諮っているものでございます。
また、区は、マスタープランで、この周辺地域を「防災拠点となるみどりの拠点」としてきました。なぜ、特定の企業のために、自ら決めた計画を変更し、住民から批判の強い地区計画を提案したのでしょうか。お答え下さい。
答弁:地区計画を提案した理由でございますが、土地所有者が自ら事業者としての住宅開発をする意思が強いこと、また、公園の配置計画を見ても隣接地に区立公園として最大規模の柏の宮公園を整備したことから、グランドを公園として残すことは困難であると考えています。
こうした中で、区のまちづくり基本方針に基づき、三井の森をはじめとする貴重なみどりの保全、良好な住宅市街地の形成、避難場所としての機能をできる限り維持することなどのため、土地区画整理事業の施行や用途地域の変更等を進める考えです。
地区計画は、それら様々なまちづくりの手法をつなぐ役割をになっており、不可欠なものと存じます。
震災対策の後退は最大の問題です。広域避難場所として有効避難面積が大幅に後退することは誰の目にもあきらかです。いま、ひとりあたりの避難面積は2,1㎡ですが、東京都の算定では、避難面積はこれまでとどのように変わるのでしょうか。
答弁:避難場所の面積の算定についてのご質問ですが、避難場所の指定はご承知のとおり都が行っております。
現在の「三井上高井戸グランド一帯」避難場所の避難有効面積は、78,600㎡で避難計画人口36,600人に対して一人当たり面積2.15㎡となっております。
今回の計画では、都の想定による当該避難場所の避難有効面積は、約42,500㎡となり、想定避難人口38,680人に対して一人当たり約1.1㎡となっており、都の地域防災計画示されている一人当たり1.0㎡が確保されております。
昨年末、中央防災会議が発表した首都圏直下型地震の被害想定は、死者数1万2千人、全壊建物15万棟、焼失家屋65万棟、杉並、中野、世田谷などで火災が多発するというショッキングなものでした。昨年の新潟中越地震の事態をみてもあきらかなように、災害時の避難生活が長引いた場合、仮設住宅やトイレの確保など、より広い避難場所、オープンスペースの確保は重要な課題であり、行政の責任で行うべきものです。地震が多発し、震災対策の強化が求められているときに、広域避難場所を大幅に縮小することは、それに逆行するものであり震災対策の軽視ではないのでしょうか、見解をうかがいます。
答弁:現状では避難場所が民有地である場合に、その土地の開発を規制する手だてはありませんが、このたびの住宅計画に当たっては、都や区で事業者に避難場所としての機能確保について強く求め、協力を得ているところでございます。
今後も、都に対して周辺のオープンスペースも加えた避難場所の指定を要請するなど、より安全な避難場所の確保などに努めるとともに、防災訓練などを通じて区民の皆様とともに震災対策の強化を図っていきたいと考えております。
公告・縦覧がはじまり、住民からの意見書提出が行われています。住民の意見は尊重されるべきで、反対が多ければ、都市計画決定の手続きを急がず、白紙に戻すことも選択肢にいれてとりくむべきですがどのようにお考えでしょうか、見解を求めて質問を終わります。
答弁:区として住民のご意見を尊重するのは当然のことでございます。そうしたことから三井グランドの土地利用転換の問題に関しましては、この間、説明会等を通じ、さまざまなご意見を伺ってまいりました。今後も、住民のご意見はできる限り取り入れていきたいと考えておりますが、これまで検討した住宅計画の基本的な枠組みや関連する都市計画については、都市計画審議会においてご審議いただくよう、進めてまいりたいと存じます。