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第3回定例会での一般質問(1)高齢者支援について

 日本共産党杉並区議団を代表し、「高齢者への支援について」「介護保険について」一般質問を行います。
 貧困と社会的格差の広がりが深刻な問題になっているなかで、増税と負担増が次々と国民のくらしを直撃しています。とりわけ、高齢者への負担増攻撃はかつてないほどすさまじいものです。6月、公的年金等控除の縮小、老年者控除の廃止、非課税限度額の廃止、定率減税の半減など税制改悪による住民税大増税で、納税通知書を受け取った多くの高齢者から「年金が増えていないのに、なぜ昨年より8倍も9倍も増税になるのか」「まちがいではないのか」と悲鳴があがりました。7月には、介護保険料、国民健康保険料の値上げが通知され、さらに今後医療費負担の引き上げなども予定されています。
 自民党・公明党が2004年の国会に年金増税の法案を出したとき、わが党は「生活苦が拡大している高齢者に対して、雪だるま式に痛みを押し付けるもの」と批判して断固反対しましたが、増税が実施されたいま、まさに私たちが指摘したとおりの状況が現実のものとなってあらわれました。税制改悪を強行した自民党・公明党の責任は重大です。
 日本共産党杉並区議団は区民の生活実態や要望を把握するためにアンケート活動を行いました。これまでに1800人を超える区民から回答がよせられました。どの回答も生活の苦しさや行政に対する意見、要望など、切々と訴えるものでした。 大きな特徴の一つ目は、若い人から高齢者まで生活の苦しさを訴えていることです。回答者の過半数が生活が苦しくなっていると答えています。74歳の女性は「生活が苦しいため1日の食事は2食、あと1食はおやつ程度」 40代の女性「着るものはリサイクル品、新しいものは買っていません。タオルもシーツもボロボロです」 76歳男性は「平成15年に癌の手術をし今静養中です。国民年金1ヶ月63,508円のうち、公共料金15,000円、管理積立費10,000円、医療費7,000円、その他2,500円。いずれも1ヶ月分です。出費の月もあります。残り29,000円で、毎日の食費、着替え、日用品などなど、これだけのお金であと1年2年・・いつまで続くのか不安の今日この頃です」と訴えています。
 二つ目の特徴は、税制改悪による想像もしなかった住民税大増税、介護保険料、国保料の値上げへのやり場のない怒りです。「控除が廃止され、国保料は4,400円から11,300円2,7倍、特別区民税は12,000円が64,800円6,3倍。どこに不満・異議を申し立てていいのか、ふざけている」68歳男性の声です。一番多かったのが「税金や保険料が高く、年金は少ない。年寄りは早く死ねということか」という怨嗟の声でした。
 三つ目の特徴は、増税への怒りとともに、税金の集め方・使い方に対する怒りです。「増税反対。本当に必要なことに税金を使用せず請求はしっかりとするくせに年金など不安を感じる。支払い方法も市民ばかりからとっていくのはどうかと思う」「日銀総裁や大企業の所得隠しを完全に洗い出したら国民の負担はもっと軽くなるはず。年金をどんどん減らし、消費税を上げればなんとかなると考える日本の政治家は最低です」など、書き込まれています。
 区民・高齢者のくらしは逼迫しています。深刻な事態が進行しているときだけに、自治体が住民のくらしをまもる役割をこれまで以上に発揮することが求められています。杉並区政においても、区民の負担を少しでも軽減するために本腰をいれて全力をつくすことを求めるものですが、区長は、これら一連の負担増が高齢者のくらしにもたらす影響についてどのように認識しているのか、うかがいます。
 今年度の住民税増税に続き、来年度は定率減税が廃止される予定です。これら一連の負担増は、高齢者が耐えられる限度をはるかに超えた、まさに生存権を脅かすものです。区長は、国に対し、いま実施されている高齢者への大増税について、中止と見直しを求め、今後実施予定の増税については凍結するよう求めるべきですがいかがでしょうか。

[答弁]最初に高齢者支援のうち、税制面に関するご質問にお答えいたします。まず、高齢者世帯への影響や国への要望についてですが、地方税法の改正による、老年者控除の廃止、公的年金等控除額の縮減等により、非課税から課税になった世帯や、税額が著しく増加した世帯がある、と認識しております。しかし、今回の税制改正は、少子高齢社会の進行に対応して、従来の住民税における高齢者の優遇措置を見直して、高齢者も含めて広く税負担を担っていただこうという国の方針に基づくものであり、特に中止や見直し、凍結を求める考えはございません。

 ごく一部の自治体ではありますが、住民税について法律にはない「上乗せ措置」を条例で決めているところがあります。たとえば、京都市では住民税の所得割の納税義務がない人には均等割も免除するという制度や、名古屋市では総所得金額が基礎控除以下の人は全額免除という制度があります。杉並区でも、災害だけでなく、経済状態に応じた税の軽減制度を検討すべきと思いますが、答弁を求めます。
 さらに、地方税法では、扶助を受けている者は減免の対象となっています。就学援助も生活扶助であり、軽減の対象に拡大できるのではないかと考えますが、区の見解を求めます。

[答弁]区民税の軽減については、地方税法並びに特別区民条例の規定により運用されております。基本は、生活保護法の規定により保護を受けているか否かが基準になっており、現在のところ変更の考えはございません。

 確定申告をしていない年金生活者の住民税額は、社会保険庁から区に届く「年金支払い報告書」によって、介護保険料だけ控除して決められます。しかし、少なくとも国保料を払っている人については区が把握できるわけですから、年金生活者で国保加入者には、介護保険料に加えて国保料も自動的に控除できるシステムを構築すべきと思いますがいかがでしょうか。今回は、まず、対象者には申告するよう案内し、申告書を送るよう求めますが、いかがでしょうか。
 高齢者の負担を少しでも軽くするために、既存の各種控除制度の活用を促進することも重要です。たとえば、医療費控除は、「所得の5%か10万円か、どちらか少ない方」となっていますが、10万円を超えなければダメと思い込んでいる高齢者も少なくありません。また、障害者手帳を交付されていなくても、要介護認定を受けていれば状況によっては障害者・特別障害者控除の対象になります。寡婦(夫)控除についても、夫と死に別れた場合だけでなく、離婚して子供を扶養している場合や、夫が行方不明で3年以上生死が明らかでない場合なども対象になります。こうした制度活用を促進するために、「広報」や「便利帳」「高齢者のてびき」などで周知を徹底するよう求めます。とりわけ、介護保険の要介護認定を受けている高齢者に対しては、障害者・特別障害者控除を受けられる場合があることを、個別に案内を通知するよう求めますが、いかがでしょうか。

[答弁]介護保険料については、介護保険法で年金受給者について、原則として、年金から保険料を特別徴収の方法によって徴収するものと定められ、控除の対象者も明確になっています。一方、国保料については、控除の対象となる国保料を誰が支払ったかは、申告をいただかなければ分らないことなどから、ただちに自動的に控除できるものではありません。
 なお、例年広報すぎなみ1月21日号において、「社会保険料控除を受けようとする方」については、申告が必要である旨をお知らせしており、前年度において課税された方には、住民税の申告書をお送りしているところです。
 高齢者に対し税控除について「広報」などで周知徹底すべきとのお尋ねですが、障害者・特別障害者控除など税の控除制度につきましては、これまでも広報などにより周知を図ってきておりますので個別に通知することは考えておりません。また、「便利帳」や「高齢者のしおり」などによる周知につきましては、今後検討してまいりたいと存じます。

 さて、各種控除の見直しによる税制改悪の影響は、住民税増税だけにとどまりません。住民税は国民健康保険料や介護保険料の算定の基礎となるものですから、住民税が増えれば、介護保険料や国保料なども連動して増えることになります。こうした「雪だるま式負担増」が起こることについて、政府与党は当初十分な認識はなかったようですが、増税が間近に迫ると事態を放置しておくわけにはいかず、住民税、国保料、介護保険料について、「激変緩和措置」が設けられることになりました。しかし、高齢者全員に適用されるわけではなく、2年後には満額になってしまいます。
 国民健康保険料は、東京23区の場合、当年度の住民税額に保険料率をかけて国保料の所得割を算定する「住民税方式」をとっています。23区の保険料率は182%なので、住民税が1万円増えると国保料が18,200円増えてしまいます。さらに、来年度は住民税の10%フラット化が予定され、税率5%の人の住民税は2倍になります。住民税が2倍にあがれば、国民健康保険料の急騰に連動し、深刻な事態が予想されます。23区の国保担当課長会も「税制改正に伴い、国保料が大幅に増加する低所得者層を中心に負担の軽減を図るための適切な激変緩和を講じられたい」と国に要望を出しています。保険料の軽減は急務です。182%の保険料率の見直しを早急に行うべきです。保険料率の引き下げを求めますがいかがか、見解をうかがいます。いまでも、高い国民健康保険料が払えず、滞納世帯が増え、資格証の発行が問題になっています。杉並区の国保加入世帯は昨年度末で132,110世帯、そのうち32,508世帯が滞納世帯(比率は20,17%)、資格証の発行数は先月末で695となっています。一連の増税の影響で、国保料の支払いが困難になり、資格証の発行世帯が増加するのではと心配の声があがっています。区民のくらしが逼迫している状況のもと、病院にかかりにくくし、生命に直結する事態をも招きかねない資格証の発行は中止すべきですが、見解を求めます。

[答弁]国民健康保険の保険料率等についてのお尋ねですが、保険料率につきましては、現在、特別区間において平成19年度の統一保険料率の検討の中で、住民税のフラット化の影響を考慮しながら、見直すこととしております。
 また、資格証明書につきましては、理由もなく長期にわたり滞納している世帯に対し、法に基づき発行しているものであり、発行にあたっては弁明の機会を付与し個別の事情を考慮して対応しております。

 杉並区の介護保険料の基準額は3000円から4200円へと40%も値上げされました。介護保険料が高い最大の原因は、これまで再三指摘してきたように、介護保険の創設時に、国の負担割合を2分の1から4分の1に引き下げたことにあります。また、これまで国と自治体が一般財源で行ってきた介護予防などの福祉事業を、介護保険に「地域支援事業」として吸収したことも保険料値上げの一因です。「地域支援事業」には高齢者虐待に関する相談なども含まれており、一般財源を投入し引き下げをすべきです。同時に増税の影響も深刻です。これまで夫婦とも住民税非課税だった場合、夫が住民税課税になると、夫の保険料は2段階、妻の保険料も1段階上がります。増税の影響で高齢者の約6人に1人が収入が増えないにもかかわらず、保険料段階が上昇します。なかには3倍になる人もいます。わが党は、これまでも、低所得者に対する保険料の軽減制度をつくるよう求めてきました。第2、第3段階の人でも、一定の収入や預金額以下の場合には第1段階と同額の保険料に軽減するなど、23区ではほとんどの区がなんらかの保険料軽減を行っています。これまでにも増して低所得者に対する軽減制度は切実な要求となっています。他の自治体で実施している介護保険料の軽減制度を杉並区でも実施すべきですがいかがか、答弁を求めます。

[答弁]杉並区の保険料は今回5段階から7段階に変更し低所得者に配慮するとともに、負担能力に応じたより柔軟なものに改定いたしました。また、税制改正に伴う非課税措置の廃止に合わせて本来の保険料を減額する緩和措置も設けておりますので、さらなる減免策は考えておりません。

 高齢者や障害者を対象にした福祉サービスには、障害者医療費助成や難病患者福祉手当、心身障害者福祉手当、介護用品の支給など、住民税課税の有無や所得金額によって、サービス対象者や利用料負担を決めているものがあります。今回の税制改悪によって、収入は変わらないのに非課税から課税になったために利用料負担が発生したり増額になったり、あるいはサービスの対象からはずされることがないようにすべきですが、区の対応についてうかがいます。
 公的年金等控除の縮小、老年者控除の廃止、非課税限度額の廃止、定率減税の半減で杉並区の税収は今年度23億円以上の増収が見込まれています。この増収分を高齢者施策のために有効に使うべきです。アンケートにも弱い人から吸い上げた税金を何に使うのかという声があがっています。高齢者に対する具体的な支援策として、たとえば、現金・区内共通商品券の交付、入院時のヘルパー派遣など、独自の支援策を打ち出すよう求めますが、いかがでしょうか。

[答弁]税制改正に伴う利用者負担に関するお尋ねですが、高齢者への影響を考慮し、訪問理美容サービスなど高齢者福祉サービスの利用者負担は、介護保険料段階と同じ7段階に細分化し、利用料負担率の下限を5%から3%に引き下げた設定としております。その他の福祉サービスの利用者負担及び高齢者支援策につきましては、今回の税改正に伴う高齢者全体の負担増に対する対応の中で考えるべき課題と認識しております。