2010年第1回定例会 一般質問全文(「保育について、国民健康保険について、後期高齢者医療制度について)
2月15日(月)、本会議で一般質問に立ち、「保育について」「国民健康保険について」「後期高齢者医療制度について」区の姿勢を質しました。全文を紹介します。
日本共産党杉並区議団を代表して、保育について、国民健康保険について、後期高齢者医療保険について、質問します。
●最初に保育について。
―最低基準緩和は許されない―
昨年12月、政府は、認可保育所の国の最低基準を緩和し、待機児童の多い都市部で保育室の面積基準を自治体に委任する「地方分権改革推進計画」を閣議決定しました。待機児童解消までの措置としていますが、期限はありません。その他の地域については、居室面積や職員配置基準は現行の国基準を維持しますが、園庭や医務室の設置、耐火上の基準、避難経路の確保などについては、地域任せになります。政府はこれらに対応する法改定を行うため「地域主権推進一括法案」を通常国会に提出する予定です。
保育所の最低基準は、1948年にこどもの健康と健全な育成のために、これだけは最低でも必要な基準として定められました。当時は国民の生活も貧しく、経済の進展や国民生活の向上にあわせて高められていくはずでした。しかし、これまでの政府がこの努力を怠ったため、保育士配置が若干改善された以外は、今でも保育室面積は62年前のままです。厚労省が委託した研究会からも、諸外国と比べて面積、保育士配置とも低く、少なくとも1,2倍以上広げることが必要と指摘されています。そうした不十分な基準ではありますが、少なくとも、こどもは全国どこで生まれても最低限度これだけは保障されるという歯止めとしてこどもを守る役割を果たしてきました。その歯止めを取り払うことは、こどもの成長・発達に応じた保育を困難にさせることになります。地域主権、地方分権の名のもとに保育の切り捨ては許されません。ただちに撤回すべきです。
保育関係者からも「もし基準が下げられ人数が多くなればひっかきやかみつきなど確実にこども同士のトラブルが増え、発達にも悪影響を及ぼしかねない。毎日10時間も過ごす保育園の環境がそれでいいのか」「4,5歳の頃は遊びながら生涯の基礎となるさまざまな体の動きを獲得する時期で、この時期にしか身につけられないものもある。スペースが限られるとこどもの自由な動きが制限されてしまう」「基準緩和で待機児問題が解決するのか」など、不安や疑問の声があがっています。また、保育施設の事故でこどもを亡くした遺族などでつくる団体の調査では、認可保育所でも規制緩和で園児の詰め込みが進んだ2001年以降、死亡事故が急増していることを指摘してきました。 区は、保育所の最低基準の緩和について、「こども一人当たりの面積や保育士配置など、子どもにかかわる部分の一定の基準は必要だが、園庭や調理室など、施設の設備面まで全国一律である必要はない。国・都も含めた三重行政の無駄を排し、区民の保育ニーズに迅速、的確にこたえていくためには、大都市杉並の実状に合わせた基準を区自らが責任をもってつくり、運営をしていくことが欠かせない」「都市部に限り面積基準を自治体に時限的にゆだねるという内容については一歩前進だがまだ不十分」と、最低基準緩和を容認、さらに推進せよという姿勢を示してきました。そこであらためてうかがいますが、①国が推進しようとしている最低基準の緩和は、「つめこみ保育」となり、安全面からも、発達の面からも問題であり、保育の質の低下につながるのではないでしょうか、見解をうかがいます。②仮に、最低基準緩和が自治体の裁量で可能となった場合でも、杉並区は現行の基準をまもるべきですが、見解を求めます。
―待機児解決は認可保育所増設で―
待機児童問題は、一刻も早く解決が望まれる国民的課題となっています。最近の世論調査でも「保育所の整備、増設」が「少子化・子育て支援策」の1位になっています。杉並区でも今年度の認可保育園入園申し込みが前年と比べて大幅に増加し、急きょ保育室の設置など対応に追われたのは、記憶に新しいところです。そこで、うかがいますが、③来年度4月の認可保育園申し込みはどのような状況になっているのでしょうか。(入園可能の児童数に対し、実際の申し込みの人数。何人が入園できないのか)また、入園できない児童への対応をどうするのか、うかがいます。
待機児急増の背景には、経済危機による共働きの増加が指摘されますが、一過的一時的なものではありません。欧米などでは、女性も出産・子育てしながら働き続けることは当たり前となっています。日本では、約7割の女性が妊娠・出産で仕事をやめていますが、内閣府の調査では家庭で子育てしている女性の84%は、保育所に入所できれば就労を希望しています。
昨年の暮れに、区内に住む31歳の女性から私あてに一通の手紙が届きました。
「2月初旬に出産予定です。8週間の産後休暇を経た後、どうしても4月1日から復職しなければなりません。代替職員の雇用も予定されておらず、4月に復職できないと本当に本当に困ってしまうのです。家族が増えるのは楽しみですが、4月からどうなってしまうのだろうという不安や心配を抱えています。そうした心配なく、見通しが立つ状態で幸せな気持ちでこの子を迎え育てていきたい。いまはそれだけを望んでいます。杉並区は子育て支援には手厚いときいていますが、それでも一区民の希望が通らない、保育園に入れない、働きたいのに働けない。そのような実状が続いているのが残念です。認可保育園が整備されていくことを望みます」という内容でした。
待機児童問題解決のためには、国も自治体も保育予算を抜本的に拡充して認可保育所の増設に本気で踏み出すこと以外にありません。昨年、区は平成22年度から25年度までの4年間で1200人分の保育の定員増を図るという保育施設の整備計画を示しました。わが党が要求し続けてきた認可保育所の新設もわずかですが盛り込まれたことは前進です。しかし、受け入れ定員増計画の半数が幼稚園の活用となっており、理念の違いや給食設備等の不十分さの問題、0歳から2歳を対象とした保育施設から幼児保育を行っている保育園へスムーズに移行できるのかなど、さまざまな懸念が浮かび上がっています。そして、肝心の認可保育所の定員増は、1200人のうちの343人です。これで区民の願いにこたえる安心プランといえるでしょうか。多くの区民は0歳から就学前まで継続してあずけられる認可保育園を望んでいます。認可保育所の増設を基本にすえた整備計画となるよう早急に見直すべきです。④わが党はこれまでも、国有地、公有地などを総点検し、土地の確保や財政支援など、国や東京都に要求せよと求めてきましたが、区はどのように対応してきたのでしょうか。また、旧若杉小学校の跡地を特養ホームなどとあわせ保育園として活用するよう求めてきましたが、どのような検討がされているのか、うかがいます。
―保育料の負担軽減を―
⑤認証保育所の保育料は所得に応じた負担となっておらず、高いことが問題でした。区は、今年度一部助成を実施しましたが、まだ不十分です。認可保育園と同様に応能負担となるよう、さらなる助成を実施すべきですがいかがでしょうか。
⑥渋谷区は年収400万円以下の世帯について認可保育園の保育料を無料としました。厳しい経済状況のもと、区民の負担を少しでも軽減するために、杉並区でも低所得世帯への保育料無料など実施に踏み出すべきと考えますが、見解を求めます。
●次に国民健康保険についてうかがいます。
―資格証明書について―
厚生労働省が2月2日に発表した国民健康保険の2008年度財政状況の速報値によりますと、保険料が払えない滞納世帯は全国で445万4千世帯(09年6月1日現在)となり、加入世帯の20,8%と、2年連続で2割を超えたことがあきらかとなりました。保険料を滞納したことにより正規の被保険証を取り上げられ、短期保険証にされた世帯は120万9千世帯、資格証明書にされた世帯は31万1千世帯、合計152万世帯で、加入世帯の7,1%にのぼります。
一方、保険料の収納率は全国平均で前年度より2,14ポイント低下し、88,4%となりました。国民皆保険となった1961年以降で最低です。保険料が高すぎるうえに、この間の経済危機による景気悪化が影響していると思われます。
①杉並区の国保料の収納状況はどのようになっているでしょうか。また、資格証明書の発行件数と、どの年齢層に発行数が多いのかうかがいます。
1997年に介護保険法が制定されたときに国民健康保険法も改悪され、保険料を滞納した世帯からの保険証の取り上げが自治体の義務とされました。当時の自民・民主・社民などが賛成し、その後の自公政権で実行されました。各政党の責任は重大です。この間、全国では、被保険者証を取り上げられ、必要な医療を受けられず、命を落とす悲劇が大きな社会問題となってきました。②短期保険証、資格証明書発行の義務規定の削除を国に求めるとともに、被保険者証は無条件で全世帯に交付すべきですが区の見解を求めます資格証明書では、病院窓口でいったん医療費を全額支払わなければなりません。あとから7割戻りますが、滞納していた保険料として徴収され手元に残らないのが実情です。厚労省は、経済的困難で窓口で10割負担が困難な人に資格証を発行しないよう通知を出しています。杉並区でも「平成20年度から、資格証明書を交付された人が緊急に医療機関を受診しなければならない場合には、医療が必要なことや医療費窓口10割負担が困難なこと、保険料がすぐ払えないことなどを確認して6か月の短期証を発行している」との答弁がありました。③平成20年度、21年度、資格証明書世帯で、緊急に医療機関での受診が必要となり短期証を発行した実績があるのかどうかうかがいます。
④肝心なことは、そのことが無保険状態にある資格証明書を発行された区民に周知徹底されているのかということです。滞納した保険料も払えず、病院にも行けず、手遅れになってしまうようなことがあってはなりません。資格証明書世帯であっても、申し出によって短期証を発行する場合があることについて、広報等で区民へ周知徹底すべきですがいかがでしょうか。
⑤決算特別委員会で、新型インフルエンザ拡大防止のために、資格証明書発行世帯に対し、1か月の短期証発行を検討するとの答弁がありましたが、発行の有無と実績についてうかがいます。
ー保険料についてー
今定例会に国民健康保険料の引き上げが提案されます。引き上げの内容は、加入者全員に課せられる「均等割額」を現行の年額37,200円から39,900円に、所得に応じて負担する「所得割額」を住民税額の0、94倍から1,03倍に引き上げるというもので、一人あたりの引き上げ額は年間6000円以上となり、過去5年間で最高額です。引き上げの最大の要因は、2008年度に導入された後期高齢者医療制度の影響です。制度の導入によって国保財政に「前期高齢者交付金」が入れられましたが、この見積もりが過大であったため、多額の返還金が発生し財源不足が生じたというものです。後期高齢者医療制度という国の医療制度変更による財源措置に穴があくからそのしわ寄せを住民に押しつけるやり方は納得できません。今回の改定によってごく一部引き下げになる世帯もありますが、大部分は負担増です。(引き下げは65歳以上の単身者で年収200万円、2人世帯で200万から230万円、65歳未満の給与所得者では単身者なら100万円、4人世帯なら200万から250万円など)
この間、貧困が広がり、雇用破壊や中小企業経営の悪化がすすむなかで、国保加入者の生活は一層深刻になっています。加入世帯の平均所得は低く、平均所得額も、91年度276,5万円から2005年度168,7万円と100万円以上も激減しています。これは、健保加入者の年間所得(約370万円)と比べ半分以下です。区民からも「収入は減る一方なのに、保険料は毎年のように引き上げられてきた。いまでさえ、生活を切りつめてやっと保険料を納めている。これ以上値上げされた。ら払えなくなる」と、悲鳴があがっています。
⑥この経済状況下で、国保加入者にこれ以上の負担を求めることは無理であり、滞納世帯をうみだすことにつながる懸念もあります。引き上げすべきでありませんが、見解を求めます。
1月に開かれた23区特別区長会では、再来年度の2011年度から、住民税に所得割率をかけて保険料を計算する住民税方式から、所得を基準とした旧ただし書き方式へ賦課方式が変更されることが確認されました。これによって、今後新たに住民税非課税世帯でも負担を余儀なくされる世帯や、低所得で障害者などを抱えた扶養家族の多い世帯ほど保険料が値上げされることになります。区長会では、値上げ世帯への2年間の減額措置を検討するといっていますが、この経済状況のもとでさらなる負担増はやめるべきです。 そもそも、国保加入者は、高齢者や自営業者、失業者などが大半を占めています。だからこそ手厚い国庫負担なしには成り立たない医療保険です。国民健康保険法第1条でも、「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」と明記しています。ところが、政府は1984年から2006年の間に国庫負担を市町村国保の総収入に占める割合の49,8%から、27,1%へとほぼ半減させてきました。崩壊の危機にひんしている国保財政を立て直すためには、国庫負担の大幅増額以外にありません。⑦区は、国保財政立て直しのためには、どのような改善策を講じる必要があると考えますか。また、国庫負担を大幅に増額するよう国に求めるべきですがいかがでしょうか。
保険料の減免についてうかがいます。
国保料の減免制度には、国が適用基準を決めている「法定減免」と、各自治体が条例などで対象や基準を決めている「申請減免」があります。⑧杉並区の保険料の申請減免の最近の実績、内容についてうかがいます。
ー医療費の一部負担金の減免についてー
現役世代3割、高齢者が1割から3割と、日本の医療費の窓口負担は高すぎます。各地で、医療費負担を苦にした受診抑制も深刻化しています。区内の医療機関の関係者からも「2週間ごとの受診を4週間ごとにした」「往診も月2回だったものを1回に減らした」など、医療費の負担が重く、受診を控えた事例が増えているとか「窓口での支払いが滞っている人もいる」という話を聞きました。
公的医療制度は、お金のあるなしにかかわらず、全国民に必要な医療を保障するためにつくられたもので、窓口負担は本来、無料または低額であるべきです。お金がなければ医療が受けられないというのでは制度の意味がありません。公的医療制度でありながら、通院でも入院でも3割もの窓口負担があるのは先進国では日本だけです。重すぎる窓口負担を引き下げ、医療を受けられない人をなくすことは喫緊の課題です。⑨国民健康保険法の第44条では、保険者は特別の理由がある被保険者に対し医療費の一部負担を猶予または減免することができるとされています。杉並区における生活困難その他特別の事情がある方についての一部負担金の徴収猶予や減免の基準、最近の実績についてうかがいます。
⑩支払いが困難な状態の患者には制度の活用をすすめるよう、たとえば医療機関に協力をお願いしてポスターをはりだすなど工夫し、この制度の存在を区民に周知することが大事です。医療費の一部負担の徴収猶予や減免制度の活用について、区が積極的に制度の周知を図るべきですがいかがでしょうか。
●後期高齢者医療制度について
後期高齢者医療制度は、医療にかかる国の予算を削減するため、75歳以上の高齢者を別建ての医療保険に囲い込み、高い保険料と差別医療を押し付ける制度です。年齢だけで別建てにして差別を強いる医療保険制度は世界に例がなく、2008年4月の導入以前から国民の怒りをかってきました。昨年の総選挙では、わが党だけでなく、民主党なども廃止を掲げました。ところが、鳩山政権は、後期高齢者医療制度の廃止を4年後に先送りする方針を決めました。これは、差別制度を速やかに撤廃し、老人保健制度に戻すことを掲げていた総選挙前の方針からの重大な後退です。しかも、公約してきた保険料の負担軽減も実行せず、4月から全国平均で14,2%8800円もの負担増を押しつけようとしています。国民の願いを裏切る二重の行為に怒りが広がっています。
①今議会に来年度の保険料引き上げが提案されます。引き上げの内容と、影響を受ける区民の人数をうかがます。また、引き上げとなる区民に対し、少なくとも現行と同額となるよう区独自に軽減制度をつくるよう求めますがいかがでしょうか。
厚労省は、ただちに廃止すれば混乱するとか、導入前の制度に戻せば一部の負担が増えるなどといいます。しかし、わずか2年前まで実施され、国民に問題のなかった制度に戻すのに特別の困難はありません。もし、一部の負担が増えるというなら、そこに支援すればいいだけです。制度を廃止しなければ差別がなくならないだけでなく、2年ごとに改定される保険料など問題点も拡大します。②後期高齢者医療制度を廃止し、いったん老人保健制度に戻すよう国に求めるべきですが、見解をうかがって私の質問を終わります。
、