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2011年第1回定例会 代表質問(全文)と答弁の概要

 日本共産党杉並区議団を代表して、区長の予算編成方針について質問します。
 
 まず、区長の基本姿勢についてです。
 一昨年の政権交代で、国民が民主党政権に託したことは、自公政権によって切り捨てられた社会保障の傷跡をなおすことでした。ところが、民主党政権は、この期待にこたえないだけでなく、傷口をいっそう広げる路線に踏み込んでいます。約束していた後期高齢者医療制度の廃止は先送り。しかも新しい制度案は、高齢者差別という点で後期高齢者医療制度と変わりません。さらに、自公政権が実施できなかった70〜74歳の医療費窓口負担の1割から2割の引き上げや、75歳以上の低所得者の保険料軽減策をなくすことまで打ち出しています。介護の問題では、要支援者からのサービスの取り上げ、年金では支給額の引き下げなど、あらゆる分野で将来への不安を増大させています。その一方で、財界の要求そのままに1兆5千億円の法人税減税、証券優遇税制の延長など、大企業・大金持ち優遇の不公平税制は温存、さらに拡大させようとしています。いまや民主党政権は、国民のくらしの実情や願いよりも、財界・大企業の要求を優先させるという自民党政権となんら変わらない姿をあらわにしています。「いったい何のための政権交代だったのか」−国民が民主党に寄せた期待は幻滅から怒りへと変わり、深い閉そく感が広がっています。こうしたなか、追い打ちをかけるように、菅内閣は社会保障財源の確保を口実に、消費税増税に「政治生命をかける」と宣言。また「平成の開国」と称して、TPP(環太平洋連携協定)参加への道をひた走ろうとしています。TPPは、日本農業を破壊し、食の安全と食料自給率を大きく脅かすだけでなく、関連産業にも大打撃となり、雇用を奪い、地域経済にはかりしれない被害を及ぼすことは必至です。こうした民主党政権の動きは、国民生活を破壊に導き、閉そく感をさらに深めることになると思いますが、区長の見解をうかがいます。
 
 日本を覆っている閉そく感のもう一つの根源に、働く人の賃金が長期にわたって減り続けているという問題があります。民間の賃金はこの12年間で平均61万円も減ってしまいました。こんなに賃金が下がっているのは先進国では日本だけです。年収200万円以下のワーキングプアは1100万人まで増えました。働く人の貧困が広がり、家計の消費と内需を冷え込ませ、日本経済の成長を止めています。その一方で大企業の内部留保−ため込み金は増え続け244兆円に達しています。働いても働いても賃金があがらないどころか引き下がる−こんな社会でいいのかどうかが問われています。労資の問題と傍観していることはもはや許されません。わが党は、非正規社員の正社員化、最低賃金の抜本的な引き上げ、中小企業への本格的支援、解雇規制のルールの強化などを一括で行って、政治の責任で賃金引き上げを主導していくことを提案しています。そのために大企業がため込んだ内部留保の244兆円を、いまこそ働く人に還元していくよう求めています。内部留保の3%をつかうだけでも月1万円の賃上げを実施できる主要企業は120社、1%を使うだけで1000人を超える新たな雇用をつくりだすことができる主要企業は87社あるという試算も出ています。経済の健全な成長のために、内部留保を賃上げと雇用確保に活用すべきとの主張は、財界系のシンクタンクからもでているほどです。
 
 さて、日本共産党区議団が昨年実施した区民アンケートには、短期間で3800人近い区民から回答が寄せられました。6割にのぼる人が「この1年でくらしが苦しくなった」と答え、8割以上の人が「将来に不安がある」と答えています。「店が赤字で人に貸すからやめてくれと言われ、2か月の給料で辞めていくことになりました。私は今年で64歳、首になっても失業保険さえありません」という60代休職中の男性、「2年前リストラにあい、今年から月54,000円程度の年金で風呂なし4万円のアパートで暮らしています。今、人に何を言う生活ではありませんが、どう死んでいくか考えています。こういう人間がいることも知ってください」という60代無職女性など、切実なうったえが寄せられました。
 区長は、深刻化する区民生活の現状とその原因についてどう認識していますか。社会を覆っている閉塞状況を打開するためには、その根源にある「賃下げ社会」「社会保障の後退」政治からの転換が求められていますが、区長の見解をうかがいます。
 
 自治体の責務は、国の悪政から区民のくらしをまもる防波堤となること、福祉を向上させることです。ところが、11年間の山田前区政は、自治体を企業にみたて、経営感覚を取り入れるとし、計画以上の区債の繰上償還に巨額の税金をつぎ込む一方、認可保育所に入れないこども800人以上、特養ホームの待機者1800人ということに象徴されるように、保育や介護など福祉施策はおざなりにしてきました。まさに、自治体の責務を投げ捨てた区政運営でありました。田中区長には、はじめての本格予算編成にあたり、こうした前区政の総括と是正、転換という姿勢が求められています。そうでなければ、区長が予算編成方針で述べている「区民福祉の向上」という自治体本来の役割を真に果たすことはできないと思いますが、認識を問うものです。
 
 昨年、杉並版「事業仕分け」行われました。わが党が中止を求めてきた本庁の土日開庁なども仕分けの対象となりましたが、何にもとづいてその事業を選定したのか不鮮明であり、さらには外部評価委員の議論だけで結論を出し、区の意思決定とするやり方に疑問の声があがっています。特に南伊豆健康学園についていえば、一度も現場をみていない外部評価委員が、机上だけで議論し廃止という結論を出すというやり方は納得できません。健康学園を必要とする児童は存在しており、存続すべきであります。こうした事業仕分けのあり方は見直すべきですが、見解をうかがいます。あわせて、田中区長は、これからの行財政改革をどのように進めようとしているのか答弁を求めます。
 
 「減税自治体構想」について、区長は就任直後、当面凍結を打ち出しました。新たな基金の積み立ては行わないとしていますが、本来の自治体への転換なら、区長の姿勢として明確に廃止を打ち出すべきではないのでしょうか、認識を問うものです。

 「区民福祉の向上」は自治体の当然の責務です。問題は一般論でなく、区民の直面しているくらし、雇用、介護、子育てなどへの支援をどう尽くしきるかです。以下個別の課題8点についてうかがいます。
 
 1点目は、高齢者福祉・介護について
 「90歳の母親を介護しています。有料施設は超高額、軽費ホームは5年待ち、介護者は高齢・・・。一段落し、自分の番になったらだれがみてくれるのか」これは、わが党のアンケートに寄せられた60代女性の声です。高齢者介護に対する要望や関心は高く、待ったなしの課題となっています。
 予算編成方針では、あらたに「在宅医療相談調整窓口」の設置、後方支援病床の確保、要介護3以上の高齢者を介護する家族の負担軽減として生活支援サービスの創設など、在宅療養支援体制の充実を図ることが示されましたが、施設整備の面では、南伊豆健康学園を23年度末で廃止し、特養ホーム整備に関する調査・検討を行うという記述にとどまっています。健康学園を廃止すること自体わが党は反対であり、その是非については別の場での議論といたしますが、施設不足をめぐってあらたな問題が広がっています。
 通所介護事業所で実施している宿泊事業―通称「お泊りデイサービス」が広がり、杉並でも11か所展開されています。特養ホームやショートステイなどの深刻な不足のために藁にもすがる思いで利用されていますが、介護保険事業外の自主事業で法的な基準や規制がないまま「高齢者のネットカフェ」といわれるような状況も生まれています。わが党の都議団が、都内の事業所にアンケート調査を実施した結果、切実な要望にこたえて努力している事業所もあると同時に、防火・防災対策、緊急時の対応も不十分などの問題点があることもうきぼりになりました。先日、私は、チェーン展開している区内の事業所を訪ねました。民家を小規模デイサービスとして使用し、2部屋12畳ほどの居間で昼間はデイサービス、夜はその同じ部屋で簡易ベッドを使って宿泊。部屋は男女別なくプライバシーもない状態。特養ホーム入所待ちのため、8月末から宿泊継続という人もいました。区長は、こうした事態をどう認識し対応するのかうかがいます。
 こうした事業が広がる背景には、先にも述べたように、特養ホームや認知症グループホーム、ショートステイなどの施設が圧倒的に不足しているという深刻な実態があります。施設整備が急がれています。編成方針のなかで、国・都・区の3者による「まちづくり連絡会議」を設置し、「区内の国有財産、都・区の公有財産の有効活用を図り、行政サービスの向上と地域の実情に即したまちづくりを推進することが表明されました。わが党は、これまでも、公有地の有効活用で介護や保育の施設整備促進をと訴えてきました。この連絡会議のなかで、特養、小規模多機能、ショートステイなど、総合的な施設拡充に向けて早急に検討するよう求めますが、見解をうかがいます。
 見守り事業については、75歳以上の高齢者を対象に「安心おたっしゃ訪問」の実施が表明されました。一定期間に何らかの支援や医療・介護のサービスを受けていない高齢者や、日常的に見守りや声かけが必要になると想定される高齢者の世帯を優先的に訪問するというものです。そこで中心的な役割を担うのは区内に20か所ある地域包括支援センターの職員で、区はそのための体制強化を図るとしています。具体的には、人員の大幅増員、委託費の増額などが必要となりますが、区はどのように体制強化をしていこうと考えているのでしょうか。また、区の役割は、情報の集約・進行管理・困難事例の対応などとなっていて、区職員が直接訪問するものではありません。公的責任がきわめて狭いものとなるのでありませんか。高齢者がおかれている実情などを把握するためにも、これまでもわが党が主張してきたように、訪問面接調査に区職員も一緒にかかわっていくべきです。見解をうかがいます。
 
 2点目、医療について
 4月から、東京23区の国民健康保険料の算定方式が住民税方式から旧ただし書き方式に変更になります。各種控除が適用されないため、控除を受けている低・中所得世帯や障害者、家族人数の多い世帯の負担が重くなります。65歳以上で年金収入200万円の2人世帯の場合、6万3840円から10万1863円と、3万8023円の値上げになります。「経過措置」を2年間実施するといいますが、それでも7万3345円で9505円の値上げです。いまでさえ高い保険料に悲鳴が上がっていて、値下げこそ必要なのに値上げなどとんでもありません。中止すべきです。国保料が高い最大の問題は1984年には50%だった国庫負担がいまは24%にまで減らされてきたことです。民主党は「政権をとったら国庫負担を9千億円増やし、保険料をさげる」といってきましたが、ここでも約束を放り投げているばかりか、「広域化」で、自治体の一般会計から国保会計への独自の繰り入れをやめさせ、保険料の引き上げを進めようとしていることは許せません。
 さて、病気やけがをしても安心して医療にかかれる体制を整備していくことは自治体の責任ですが、編成方針では、高齢者の医療費助成についてはふれられていません。わが党のアンケートでは、高齢者の医療費無料化を望む声は強くなっています。75歳以上では、無料化とともに一定所得者の3割負担を1割にとの要望もかなりみられました。「84歳でもボーダーラインを少々超えたため、ずっと医療費を若い人なみにとられ、一昨年がんで入院したときも1割で済んだのにと思った。税金も保険料も住民税も20万円以上取られ、本当に困っています。75歳以上無料でなくてもせめて1割に」という80代女性、「75歳以上を無料にしなくてもいいから3割の負担は考えてもらいたい。年をとるといろんなことで医者に行く」という80代女性。入院医療費の負担も重く「夫が緊急入院し、個室に入れられ、室料だけで月50万円弱、年金3カ月分が消えます。年よりは早く死ねの見本みたいねと話しています。これで消費税値上げなどとなったら断食して死ぬしかありません」という70代女性の記述もありました。
 高齢者の医療費負担軽減は切実な願いです。区として、高齢者の医療費助成制度の実施に踏み出すべきですが、いかがか答弁を求めます。
 がん対策では、わが党も求めてきた個別受診勧奨の実施などが示されました。前区政のもとで検診費用が有料となったことで、受診をひかえる人も少なくありません。受診率向上のために検診費用を無料にもどすよう求めます。区長の見解をうかがいます。

 3点目、保育・待機児童対策について
 民主党政権が今国会で成立をねらう「子ども子育て新システム」は、「待機児解消」「二重行政をなくす」などを名目にしていますが、実態は、自治体の責任をなくし、保育所探しは保護者の自己責任、保育料は応益負担、そして親の働く時間に応じて利用できる保育時間を認定するという大改悪です。保育関係者などの強い反対で、当面、保育所と幼稚園は存続することになりましたが、将来は「こども園」に移行を促す方針です。新システムは「安心してあずけられる保育園を増やしてほしい」という父母の願いに逆行するものではありませんか。区長の認識をうかがいます。
 保育園の待機児童解決は待ったなしの課題です。区役所3階の保育課には、子どもをおぶった若い父母が申し込む姿、カウンターで涙を流しながら切羽詰まった現状を訴える姿があります。私たちのところにも、保育園に入れないのでこどもを神奈川の両親にあずけている」という声も寄せられました。保育所不足が家庭生活をもゆがめている深刻な実態がうきぼりになっています。
 区は、昨年4月の待機児童は23人と発表しています。しかし、これは待機児童を少なくみせるために認可だけでなく認可外の保育施設に入所させた結果の数で、2月の第一次の認可保育園入園申し込みでは、826人の児童が入園できませんでした。そうした児童は、それぞれどういう保育施設に入ったのでしょうか。認証・区の保育室・無認可など、それぞれの人数を示してください。
 1月末現在の今年4月の認可保育園申し込み児童数は、入園可能数1119名に対して2377名と聞いています。この時点ですでに1258名の待機児童が発生ということになります。そうした事態に対して、区は、認可保育所2か所、区保育室5か所、認証3か所、旧若杉小跡地の区保育室を整備するとしました。それでも、最終的に待機児童は大幅に増えるのではと懸念されています。わが党は「待機児解消は認可保育園の増設を柱にすべき」と繰り返し求めてきました。しかし、来年度の認可保育所整備は、保育の安全安心プランにもとづく私立保育園の分園2か所69名分のみで、これまでと同様、緊急、応急的な対策となっています。認証や無認可は、ビルの一室で狭い、園庭がない、保育士などの正規職員は6割でよいなど環境が劣ります。先日、私は0歳から5歳の30名定員となっている区内の認証保育所を見に行きました。車が行きかう道路に面し、玄関は猫の額ほどで、保育室はビルの1階と2階、率直に言って、本当に狭い、つめ込みだと感じました。さらには、保育士が事務をとるスペースもなく、こどもたちが散歩にでている間にあいた部屋の床にノートをおいてかがんで書き込んでいる姿を目にした時は、本当に気の毒というほかありませんでした。認証とはいっても、保育内容は認可保育所と同様、児童福祉法にもとづいて定められている「保育所保育指針に準じて行う」とされています。しかし、こうした環境のもとで、この指針が重視している年齢に応じた保育ができるのか疑問をもたざるをえません。保育の質が問われます。1日の大半を過ごす乳幼児にとって、このような保育環境の継続は見過ごせないと思いますが、区長はこうした実態をどう認識していますか。
 世田谷区では、小田急ライフアソシエが運営する認証保育所での不正事件発覚後、認証保育所推進の方向から、認可保育所を2年間で24園増設する計画を打ち出しました。利用されていない国有地を借り受けるなどして整備を進めています。杉並区も、こうした認可保育所を大幅に増やす方向こそとるべきではありませんか、答弁を求めます。

 4点目、障がい者施策について
 精神障害者保健福祉手帳1級の方に福祉手当の支給開始が表明されました。わが党も求めてきたことであり、大きな前進と評価するものです。しかし、障がい者団体からは「2級の人でも1級と変わらない人もいる。ぜひ2級の人にも支給してほしい」との声が出されています。2級の方も手当の支給対象とするよう求めますがいかがか見解をうかがいます。

 5点目、雇用について
 予算編成方針では、雇用と産業振興に関する施策はきわめて不十分といわざるをえません。この不況のもとで、雇用の拡大と中小企業振興のために手立てをつくすことは自治体の大事な役割であり、区民からも望まれていることです。その一例として注目され、全国に広がっているのが住宅リフォーム助成制度です。実施されたところでは、どこでも住民の利用が多く、地域経済への波及効果は「予算額の10倍を超える」と評価されています。都内でも品川区では工事費用の5%で上限10万円、耐震改修と併用の場合は工事費用の10%で上限20万円の直接補助を実施し歓迎されています。杉並区としても、現在行っている住宅修築資金融資あっせんではなく、住宅リフォーム助成制度の創設など、直接助成を実施するよう求めますがいかがか答弁を求めます。
ョー さて、山田前区政の行革で、少なくない労働者が犠牲になってきました。区の事務事業の6割を民間でという方針のもと、業務委託や指定管理者制度が推進され、セシオン杉並での賃金未払い事件や図書館の労働者の低賃金など、官製ワーキングプアを広げてきました。これらは公的責任の放棄以外のなにものでもありません。いまこそ、こうした行革を見直すときです。総務省は、指定管理者制度について「留意すべき点があきらかになってきた」とし、「価格競争による入札とは異なる」と指摘し、コスト削減のみを目的としないよう都道府県などに通知しました。杉並区として、官製ワーキングプアをなくし、安定した雇用と生活をまもるためにも、最低賃金を明記した公契約条例の制定を求めすがいかが答弁を求めます。
 若い人の就職難も深刻です。この春の大学生の就職内定率は68,8%と過去最悪です。行政としても青年の雇用対策の強化やニート・ひきこもり対策に力をいれるべきです。私は、9月の第3回定例会の代表質問で都内で唯一就労支援課を設置している足立区の取り組みを紹介しました。足立区では、区庁舎へのハローワークの出張所的機能の設置、若者サポートステーション、ひきこもりセーフティネット、ニート青年宅への訪問事業など、行政あげてさまざまな施策を展開し、いまでは区役所にくれば何とかなる、といえるまでになっています。杉並区も、こうした事業を参考に、若者の就労支援事業にとりくむべきですが、見解をうかがいます。

 6点目、住宅について
 「住まい」の問題も切実です。「高齢者住宅の申し込みが年1回しかない。3年申し込んでもあたらない。もっと高齢者が入れるようにしてもらいたい」「40年間都営住宅に応募してきましたがいつもあたらない。民間のアパートに長年住んでいますが、高齢になるにつけ、不安でいっぱいになります」などの声は多数にのぼります。年金生活で家賃の負担が重く、公営住宅の要望は高まってる一方です。しかし、石原都政のもと、12年間都営住宅の新規建設はゼロで、応募倍率は、11,6倍から33,7倍へとはねあがっています。
 若い人の住宅難も深刻です。「派遣切り」されて会社の借り上げアパートを追い出され、路上生活に陥るというケースも後をたちません。23区の場合、緊急一時保護センターから自立支援センターを経てアパートを借りて就労自立できるまで支える制度がありますが、実態は、緊急一時保護センターに入った人のうち就労自立できるのはわずか4人に1人とのことです。国の「住宅手当」も、都の住宅・生活資金の貸付制度も貧弱です。公的な家賃補助も公営住宅への単身入居資格もないため、日本は親の家に住み続ける人がヨーロッパと比べて格段に多く、それが未婚化と少子化の隠れた原因との指摘もあります。
 住宅政策の根本的な転換が必要です。高齢者も若い人も入居できるよう区営住宅を増やし、家賃補助の実施に踏み出すべきですが、いかがか答弁を求めます。

 7点目、災害対策について
 阪神淡路大震災から16年。「災害は忘れたころにやってくる」ということを忘れてはなりません。杉並区は減税基金を災害時にも活用するということで、災害対策基金を廃止し、減税基金に統合してしまいました。しかし、減税基金が凍結となっているいま、災害時に対応するための基金を復活させることが必要ではないのでしょうか。そして、一番大事なことは、被害を未然に防ぐということです。民間住宅の耐震診断、耐震改修への助成をおもいきって拡充することが、区民の安全・安心のまちづくりにとって重要であると考えますがいかがか、答弁を求めます。
 
 最後、8点目は小中一貫教育についてです。
教育委員会は「質の高い教育を行う」とし、小学校から中学校までの9年間を通した一貫性のある教育を推進するための「杉並区小中一貫教育基本方針」を定め、杉並区全域で進めようとしています。しかし、和泉小・新泉小・和泉中で先行して行われてきた小中一貫教育は、現場教師に過重な負担となっていること、和泉小、新泉小から和泉中へ進学した生徒は3分の1にもみたない状況であり、そもそも9年間を通してという目的はとん挫していることなど、多くの問題点を抱えています。他区で実施している状況もふくめ、不安材料は多く生み出されています。また、高円寺地域で提案されている小中一貫教育の地元説明会でも否定的意見や数多くの疑問の声が寄せられています。強引に計画を推進することは許されませんが、認識をうかがって、私の代表質問を終わります。
くすやま美紀議員の質問にお答えします。
○民主党政権の動きについてのお尋ねでございますが、現在、社会保障や税制の抜本的見直し、またTPP問題など、与野党を問わず、避けて通れない喫緊の課題が山積しております。それらについて、問題を先送りせず、スピード感を持って徹底的に論じ合い、より良い政策を見つけ出していくべきであると考えます。
○次に、区民生活の現状等に関するお尋ねですが、景気が力強く持ち直す気配が感じられない中、22年中の区民所得も微減となっているなど、区民生活は依然として厳しい状況にあると認識しています。こうした社会経済状況への対応は、第一義的には国の社会保障制度や雇用政策によるところであり、国において十分議論・検討し、国民に確かな将来展望を示していくべきであると考えています。そうした中で、区としては、基礎自治体としての役割を果たす観点から、緊急経済対策の継続実施や、子育て、介護、医療等の基盤を整えることなど、区民生活の安心・安定に向けて取り組んでいくこととしているところです。
○次に、前区政の総括と是正等の姿勢が必要とのお尋ねですが、私は、前区政のすべてを肯定することも、また、すべてを否定することもあってはならないと申し上げてまいりました。 そうした認識から、この間、これまでの区政について、一旦立ち止まって、施策に妥当性や継続性があるかという視点で検証を行い、全小中学校普通教室へのエアコン設置への対応、減税自治体構想の凍結、多選自粛条例の廃止、さらには地方債の発行による財政運営など、前区政からの必要な軌道修正等を図ってきました。これらの取組の根底には、区民福祉の向上こそが基礎自治体としての最大の使命であるとの強い思いがありました。こうした考えのもと、私が区長として初めて本格的に編成した23年度予算は、区民生活の中で最も切実な医療と介護の問題について「健康と医療・介護の緊急推進プランj に基づく予算化を図るとともに、喫緊の課題である福祉・医療、教育、まちづくりの3つの分野に特に意を用いて編成し、区民福祉の充実に努めていくこととしてございます。
○事務事業等の外部評価(杉並版「事業仕分けJ)と、行財政改革に関するご質問にお答えしますの昨年11月に実施した「事務事業等の外部評価につきましては、課題を有する8事業について、外部評価委員会に評価・検証をしていただきました。私も聴いておりましたが、委員それぞれの専門的知見を踏まえた着眼点や、考え方が示され、大変参考になる評価結果であったと感じております。評価の結果については、区としての対処方針を策定し、直ちに事業の見直しに着手するとともに、その一部は23年度の事業計画や予算に反映しております。このように、今回の「杉並版事業仕分け」は大きな成果を上げたものと高く評価しており、23年度も同様の考え方を基本に実施する予定でおります。また、こうした外部評価を含めた行政評価の精度を高めていくことが、今後の行財政改革の推進にとっても重要であると考えております。
○減税自治体構想に関するお尋ねにお答えします。減税自治体構想については、新たな基本構想策定の中で、改めて議論することとしておりますので、今後の取扱いについては、その議論を踏まえ、取扱いを検討してまいります。

○通所介護事業所で実施している宿泊事業についてのお尋ねですが、宿泊は介護保険法外の事業であり、介護保険法に基づく指導対象にはなっておりません。現在は、通所介護事業所の指導の際などに、宿泊事業の実態把握にも努めているところであり、今後、宿泊事業について一定の基準を作成することを予定している東京都と連携しながら、適切な対応を図って参りたいと考えております。

○次に、公有地の有効活用に関するお尋ねですが、区ではこれまでも、都有地を活用した福祉施設の整備等を図っており、23年度予算では、新たに、和田一丁目の都営住宅跡地への特別養護老人ホームの整備にかかる経費を計上しています。これらの介護基盤の整備推進に向けては、区内での国や都の公有地の活用を図ることが有効な手立ての一つでありますので、新たに設置する「まちづくり連絡会議」では、そうした国有財産・公有財産の活用可能性についても協議・検討していく考えでございます。
○「安心おたっしゃ訪問」 に関するお尋ねですが、この事業の中心的役割を担う地域包括支援センターについては、訪問だけでなく、その後の支援にも十分に対応していけるよう、専門の資格を持った人員体制の充実を図ることとしております。また、区の職員は、原則として初回の訪問には従事いたしませんが、困難な事例については地域包括支援センターや民生委員、関係機関と連携して訪問するなど、積極的に対応してまいります。

○高齢者の医療費助成制度についてのお尋ねですが、今後より一層の高齢化が進むなかで、増大し続ける高齢者医療費に対応するためには、まず国が社会保障制度の改草を迅速に打ち出し、国民的合意を得ることが欠かせないと考えております。
○がん対策に関するお尋ねですが、現在、区では、国が平成21年度から開始した女性特有のがん検診推進事業を除く全てのがん検診において、区民に自己負担を求めております。これは、がん検診を受診していることの意識付けを徹底するために行っているもので、無料にする予定はございません。なお、がん検診受診率向上策といたしまして、来年度から、がんセット検診を創設するとともに、がん検診の個別勧奨通知を実施する予定でございます。

○「子ども・子育て新システム」についてのお尋ねですが、新システムは、すべての子どもへの良質な成育環境を保障し、子ども・子育てを社会全体で支援することを目指して、検討が進められるべきものと認識しています。今後も、国における新システムの検討状況と関連法案の国会提
出の動きを注視してまいるとともに、区におきましては、待機児童ゼロを目指して、多様な保育サービスの提供に努めてまいりたいと存じます。
○昨年4月の待機児童数に関するお尋ねですが、昨年の認可保育園の入国状況ですが、ご希望に添えなかった約820人の方は、区保育室約300人、認証保育所約200人のほか、区立子供園長時間保育、私立幼稚園預かり保育、家庭福祉員、グルーブ保育室などがそれぞれ10名から20名程度、さらに、その他事業所内保育施設などの施設に入所等されたものと考えてございます。
○認証保育所などの保育環境についてのお尋ねですが、認証保育所や区保育室は、大都市杉並の特性や、多様化する保育ニーズを踏まえ、保育環境の確保にも留意しながら設置をしております。小規模な施設が主体ではありますが、施設設備面の工夫、近隣公園の活用及び近隣国との連携など、それぞれの施設の実情に応じて創意工夫を図り、保育年齢に応じた良好な保育所環境の維持・向上に努めているところです。
○認可保育所に関するお尋ねですが、どの自治体におきましても、地域の実情に合った保育施設の整備に取り組んでいるものと認識しております。本区におきましでも、区民の皆様から多数寄せられた切実なご要望を踏まえ、認可保育園分園のほか、区保育室などの緊急設置に取り組み、待機児童を大幅に減少させたものでございます。今後、増大かつ多様化する保育ニーズに対応するための新たなプランを策定するなかで、民間認可保育所の増設や、区保育室の今後のあり方などを含め、総合的に検討してまいりたいと存じます。

○精神障害者の福祉手当に関するお尋ねですが、先ほどもご答弁申し上げましたが、支給対象者につきましては、身体障害者・知的障害者に比べて、国や東京都において福祉手当の創設がない中で、杉並区からまず第一歩を踏み出すということで、精神障害者保健福祉手帳1級の方を対象としたものでございます。

○住宅リフォーム助成制度についてのご質問にお答えします。すでに区では、住宅改修に対して、区民への直接助成を行っております。耐震改修については、一室であっても、また、耐震性が現状よりも少しでも高まれば、助成対象としており、23区の中でも高い実績をあげています。また、高齢者が生活しやすいように住宅を改修する際にも助成を行っており、今後とも、これらの事業を推進していく考えでございます。
○委託先労働者についてのお尋ねにお答えいたします。区の委託業務において、労働者が良好な環境で働くことは望ましいことであり、業務の円滑な実施と区民サ}ピスの向上にとっても重要なものだと考えております。 こうしたことから、区では労働関係法令遵守の確認制度を今年度から実施し、さらに来年度からは、最低賃金額を明記した確認書の提出を委託業者に義務付けるなど、制度の一層の充実を図ってまいります。なお、ご指摘の公契約条例につきましては、受注者側の労働条件を条例で定めることに、実効性や妥当性に課題があるとの指摘もあり、慎重に検討すべきものと考えております。
○ 若年サポートセンターの設置など青年の雇用対策の強化に関するお尋ねですが、現在杉並区では、求職者に対して、就労相談、就職面接会、ワークインフォメーションによる情報提供事業を行ない、適職探しを支援しています。今年度は、すぎなみで働こうキャンペーンの一環として、就職セミナーを新たに実施していく予定です。

○区営住宅の増設や家賃補助の実施に関するご質問にお答えします。高齢化が進む中で、区営住宅は、高齢者や障害者など、より住宅困窮度の高い区民を支援するため、住宅セーフテイネットとしての役割を担っております。そのため区では、この問、住宅困窮度の高い区民には、当選率が高くなるよう、優遇抽選制度を実施するとともに、高齢者・障害者専用枠を設け、区営住宅への入居をしやすくしてまいりました。今後、年度内に都からシルバーピア1団地を含む2団地を受け入れますが、既存ストックの有効活用を図るとともに、高齢者や障害者等の民間アパートへの入居支援事業も充実させ、真に住宅に困窮する区民への住宅供給を図ってまいる考えです。

○災害対策のための基金についてのお尋ねですが、区では昨年の「災害対策基金j の廃止に際し、小規模な災害については「財政調整基金j 、大規模災害については「減税基金」で対応することとしています。「減税基金」につきましては、基本構想を策定する中で、改めて議論していただくこととし、新規積立を凍結しておりますので、現時点での大規模災害への備えにつきましては、汎用性のある「財政調整基金j により対応したいと考えております。

○耐震診断、耐震改修の拡充についてのお尋ねですが、建築物の耐震化につきましては、首都直下地震の切迫性に対し、区民の生命財産を守るため、耐震化率の目標を掲げて助成金の増大や対象建築物の拡大を行い重点的に取り組んで来たところでございます。来年度は、さらに登録精密診断士を大幅に増員し、区民の耐震改修の選択肢を広げる予定をしております。また、緊急輸送道路の沿道の耐震化につきましても、東京都と連携いたしまして支援を強化していく所存でございます。

○小中一貫教育に関するお尋ねにお答えします。現在進めております「高円寺地域の新たな学校づくり」に関する意見交換会では、小中一貫教育を核とした学校再編案を複数提示し、計画案の段階から各小中学校等で広くご意見をいただいているところです。小中一貫教育における教員の指導体制や施設等の在り方に関する質問に対しては、区費教員等の配置や施設の効果的な活用等、望ましい教育環境の実現に向けて丁寧な説明を行っております。今後も、地域の方々のご意見を十分に踏まえ、計画の策定に努めてまいります。

【再質問】
○介護や保育、医療など、社会保障・福祉全般において、前区政の取組をどう評価しているのか。熱心に取り組んだと見ているのか、消極的だったと見ているのか‘福祉全般についてどう総括し、どこを是Eじていこうという姿勢を持っているのか、区長の見解を伺います。
○事業仕分けの手法について、現場をみないで結論を出すようなやり方はあまりにも乱暴ではないかと再度指摘するものです。改める考えはないのか、再度答弁を求めます。

○「子ども・子育て新システム」に対する区長の評価を明確に答弁していただきたい。
良好な保育環境の提供が自治体の責務。認可保育所の増設を求めるが、再度答弁を。

[答弁]
○くすやま美紀議員の再度のご質問にお答えします。まず、前区政の福祉施策全般に対する評価を、とのことですが、私は、この分野での前区政は、「子育て応援券|や「長寿ポイント事業」などの新たな施策に取り組んでおり、一概に消極的であったとは思っていませんが、課題もあったのではないかと考えています。とりわけ、医療と介護の問題は、区民生活の中でも最も切実なものであり、23年度予算では、緊急推進プランに基づき、安心して妊娠・出産できる環境づくりと、がん対策、在宅で介護hしている方々の支援について取り組むほか、精神障害者への福祉手当を創設するなど、これまで十分に手が届いていなかった部分への対応を図ることとしたものです。
○事務事業等の外部評価(杉並版「事業仕分けJ)に関する再度のご質問にお答えします。現地を見ないで評価できるのかといったご指摘ですが、健康学園の設置目的や現状、これまでの経緯などの豊富な資料を基に評価者が、所管する担当者と十分に質疑を交わしたうえで評価・検証が行われたものであり、適切になされたものと考えております。
○次に、保育についての再質問にお答えします。まず、国の「子ども・子育て新システム|に対する評価についてですが、その基本的な考え方につきましては、私も是とするものです。新システムについて、様々な意見があることは承知しておりますが、今後、検討会議や国会の場における議論を注視してまいりたいと思います。また、認可保育所につきましては、先ほどもご答弁申し上げましたが、今後の保育ニーズに対応するための新たなプランを策定するなかで、民間認可保育所の増設や、区保育室の今後のあり方などを含め、総合的に検討してまいります。